日本で生ハムを。ノービレの開発

挑戦でうまれる あたらしい東北ハムブランド

挑戦でうまれる あたらしい東北ハムブランド

究極の無添加・庄内産生ハムを目指し、構想20年、足かけ5年の研究の末、ついに庄内の風士・文化に根ざした庄内プロシュート「ノービレ」が誕生しました。
イタリアパルマ産の「パルマプロシュート」といえば、世界中から愛される世界3大生ハムの1つ。この本場パルマの製法に準じて庄内の厳選された素材を用い、熟練の職人が手塩にかけてじっくり18ヵ月熟成しています。

2018年には、世界最高レベルの食品品質コンテストと評価される「DLG」で金賞を受賞。長年の情熱が実を結びました。

【パルマプロシュート】
イタリア語で骨付きもも生ハムを総称してプロシュートと称します。 特にパルマ産の18ヶ月間以上熟成させたものを「ProsciuttoDi Parma」と称してDOP(保護指定原産地表示)の格付けを得られます。 長期乾燥と熟成により、 余分な水分が抜けると同時にたんぱく竺が分解してうまみ成分が生成されることにより醸し出される、 芳醇な風味とまろやかな口どけが人気です。

構想・・・

イタリアパルマプロシュート(Prisciutto Di Parma)をモデルとした骨付き生ハム『庄内プロシュート』開発の構想は、私がハムの本場ヨーロッパ(ドイツ・イタリア・ハンガリー)を視察した平成6年の食肉通信社主催の視察旅行から始まる。当時、日本は海外からの生ハム輸入は禁止されており、ようやく工場認定制でイタリア産生ハム:プロシュート並びにスペイン産生ハム:ハモンセラーノの輸入解禁を間近に控えていた時期の渡欧であった。イタリアの生ハムメーカー各社は日本への輸出解禁に期待を寄せ、視察の際プロシュートの工程説明には包み隠さず、詳細にわたる説明を加えてくれてPRに余念がなかった。とりわけ工場視察を終えた試食会で大皿に山盛りに提供された試食用の生ハムをむさぼるように舌鼓を打ちながら試食したもので、その感動的な美味しさが今でも忘れられない。

帰国後、当時東北ハムに入社間もない私は起業家セミナーを受講した際、当時話題だった雪で作った熟成庫の『雪室』を活用してパルマプロシュートタイプの生ハムを生産する構想を発表したが、時期尚早と判断して以来その構想を心に秘めていた。輸入解禁して間もないイタリアプロシュートの販売状況も定まらず、長期熟成生ハムが国内の市場でどのような評価に至るか推移を見守る必要性を強く感じていたからである。その後、徐々に国内シェアを伸ばしできた輸入生ハムが輸入ワインブームに後押しされて、近年目を見張るほどの伸びを示してきた頃、いよいよ時機が到来したと判断し、私は生ハム生産再開を決断した。

イタリア視察旅行
パルマプロシュートの視察にて

生ハム生産の再開

弊社は創業以来85年の歴史を誇り、古くから国産生ハム(生サラミ)を生産していたが、加熱食肉製品と非加熱食肉製品を同じ施設で製造することが、お互いの品質に悪影響を及ぼすことを懸念して、平成10年頃からいったん生ハム生産を中断して加熱食肉製品製造に専念したという経緯があった。
機は熟して平成24年、生ハム専用に食肉製品製造許可を取得して東北ハム鶴岡第2工場で満を持して生ハム生産を再開。再開にあたり手始めに、直火窯で燻煙するジャーマンスタイルの4カ月熟成もも生ハム並びに北欧風生サラミの生産を開始。同時にイタリア パルマプロシュートタイプの骨付き生ハムの研究を開始した。(イタリアの製法に準じた生ハムのことを総称してプロシュートと呼ぶが、特に骨つきもも肉の表面に塩のみを摺り込み、燻製せずに最低10ヶ月以上熟成させたものが本来のプロシュートである。)

プロシュートタイプの製法については、国産プロシュート製法の第一人者:帯広畜産大学教授 三上正幸氏を訪ねて、指導を受けた。三上氏は極寒の帯広の地で、国産原料を使用して食品衛生法で規定された工程を守り、見事なまでに生ハム生産を継続的に行っていた。専用工場を新築して、一定量の量産可能な工場を築いていたのがとても印象的であった。私とハム職人:谷野哲雄はその工程をつぶさに見て、詳細に渡る説明をうけ、念入りに疑問点の聞取りを行い、国内でのプロシュートタイプ生ハム生産の手ごたえを得た。そして帰郷後まもなく生ハム試作を実行に移す。三上教授の指導に従い、プトロタイプの1号を4本試作した。

帯広畜産大学視察風景
北海道帯広畜産大学視察風景
プロシュート試作品
プロトタイプ1号

究極の無添加、地産地消

鶴岡は学校給食発祥の地、明治22年、日本の学校給食は鶴岡に始まった。弊社は創業以来、常に鶴岡学校給食にハム・ソーセージを供給し続けており、昨年発行された「もいちど、食べたい」(鶴岡まちづくり塾編集)にその歴史が紐解かれている。必読の書である。東北ハムは学校給食で永年培ってきたノウハウと技術、経験を活かして、無添加による製品づくりに取り組んでいる。
今は亡き食の哲人“磯部晶策”氏の指導のもとに山形さらど事業協同組合に所属して「無添加」での製品づくりを研究してきた。その成果は人気シリーズ無添加「出羽のしんけん工房」に代表される。

また、この「庄内プロシュート」は究極の無添加と言える。使用するのは原料肉、天然塩、米粉、黒胡椒のみで、水すら加えることもなく、すべて引き算の製法である。大切なのは心を込めて丹念にすり込む塩、まさに手塩にかけて仕込むのみ。低温で熟成させる6カ月間を経て、その後一定の温度と湿度に保って12カ月間乾燥と熟成に充てられ、ただひたすら、じっくりと旨味が醸し出されるのを待つのみなのだ。時間がすべてを生み出す。時間のもたらす滋味深い旨みにただひたすら感謝するしかない。

鶴岡まちづくり塾編集「もいちど、食べたい」
製造工程
製造工程

慶應義塾大学 先端生命科学研究所・山形県工業技術センターとの共同研究

試作品が仕上がるまでの期間は国産のおいしい生ハムを求めて、熟成(醗酵)のメカニズムを研究することを目的に産学官の共同研究に着手した。2回にわたる研究だ。1回目は慶應義塾大学 先端生命科学研究所との研究で、メタボローム解析によるうまみ成分の含有量をデータ化するとともに、国内外の12種類の生ハムの中からどの生ハムが一番美味しいかという官能検査を行った。その結果、製法の違う国産ラックスハムを除くと、東北ハム製ジャーマンスタイルもも生ハムがイタリア産生ハムに次いで2番目の高い評価であった。確かな手ごたえを感じた。また、最もうま味成分が高いとの知見も得た。

2年後、2回目からはさらに山形県工業技術センター庄内試験場による、味覚センサーを用いて美味しさをデータ化する研究が加わった。その研究では時間の経過とともに、どのようにうまみ成分が増えるかを研究した。その結果、仕込み後18カ月後の生ハムが最もおいしいというデータが証明されることととなった。

研究成果
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※メタボローム解析とは、たんぱく質や核酸、アミノ酸などの代謝物質を分析する研究です。慶應義塾大学 先端生命科学研究所(慶応大先端研)は鶴岡にあり、メタボローム解析の分野では世界一の規模の装置を有する研究機関です。

改良改善

改良改善を行うにあたり、いのちとも言える塩は徹底して吟味した。塩一つで味わいがガラリと変わるからだ。当初、色合いも含めて、プロシュート生産に適した食塩と考察してヒマラヤピンクソルトを選択していたが、後にイタリア パルマを訪れる機会に恵まれ、本場のプロシュート工場を視察すると総じて海水塩を使用していることが判明する。また、当時のパルマ生ハム協会理事長を務めるTANARA社TANARA社長からもアドバイスを受ける機会に恵まれ、やはり使用する食塩は海水塩が望ましいとの助言をいただいた。海水塩は岩塩よりも「甘い」。地元の日本海で生産する海水塩を探したところ、たどり着いたのが、地元の超人気イタリアンレストラン アルケッチァーノで扱う「月の雫の塩」である。他にも数種類の日本海海水塩を試験的に使用してみたが、粒子の粗さ、溶け具合から「月の雫の塩」が最適と判断し、プロトタイプ3号からこの塩を使用している。

製造工程写真
丁寧に塩を刷り込む様子
プロシュート写真
試作を重ねる

原料肉もプロトタイプ1号は山形県産豚骨付きもも肉、2号から最上川ファームの庄内SPF豚骨付きもも肉を使用。4号から一部を新潟県産豚皮付きの骨付きもも肉で試作を開始した。よりパルマプロシュートに近い仕上がりになることを期待している。
現在「庄内プロシュート」は年間50本に限定して生産中である。販売状況を見て、徐々に増産体制を整えていく予定である。

辰巳芳子著「いのちと味覚」

国内の料理研究家第一人者の辰巳芳子先生から直接お話を伺う機会も得た。平成28年5月、イタリア パルマ市を公式訪問して帰国した日、鎌倉のご自宅を訪問した。辰巳先生はスペインのハモンセラーノタイプの骨付き生ハムの生産を指導しているとの情報を得ており、その経緯はNHK出版新書で最近出版された著書「いのちと味覚」に詳細に記述している。辰巳先生曰く、日本人の勤勉さと繊細な気配りが長期間熟成させ、うま味を引きだす生ハム生産にとても向いているとのことだった。

塩漬けの工程で肉から出るドリップを丁寧に拭取り、原料肉を1本1本正確に重量を計量して既定の食塩を正確に処方するなどの勤勉さは、日本人にしかなしえない技だとのことである。肉食文化の浅い日本で長期熟成の生ハム生産を指導し続けたノウハウがそこにあった。日本独自の日本らしい生ハム生産の長所を一つマスターした思いである。

ユネスコ食文化創造都市 「鶴岡」と「パルマ」との交流

平成26年11月、鶴岡市がユネスコから創造都市ネットワークにおいて「食文化創造都市」の認定を受ける。さらに平成27年11月イタリア パルマ市が同様に食文化創造都市の認定を受け、パルマ市と鶴岡市の交流が始まる。
平成28年5月 パルマ市の招聘を受けて、鶴岡市職員とともに食文化創造都市ネットワークの合同会議並びにユネスコ認定記念イベント出席のためパルマ市を公式訪問する機会を得る。

イタリア視察旅行
年にパルマ訪問。パルマ生ハム協会理事長のTANARA社TANARA社長と
イタリア・パルマ市訪問
パルマ生ハムフェスティバル(Festival del Prosciutto di Parma)開会セレモニー
イタリア視察旅行
ランギラーノ市長(向かって左端)らとの記念撮影

訪問中に私はパルマ市職員ジャンニ氏から翌年のパルマ生ハムフェスティバル参加の打診を受け、再会を誓う。また、この時からイタリア現地法人GEN代表:齋藤由佳子氏と東北ハムの交流が始まる。GENは鶴岡市とイタリア パルマ市並びに平成29年同じくユネスコの認定を受けるイタリア アルバ市との交流の橋渡しを担っていた。GENは主にイタリア食科学大学で学ぶ多国籍の学生により専ら食文化(ガストロノミー)の研究を行う多くの学生を鶴岡市に滞在させる企画を年数回行っている。

イタリアの学生との交流
イタリアの学生との交流会

さらに同年12月、イタリア食科学大学学長のアンドレア・ピエローニ氏ほかガストロノミー学の権威に日本遺産:松ヶ岡開墾場跡地で庄内プロシュートの可能性についてプレゼンを実施、多くの共感と励ましの言葉を得て、庄内プロシュート事業に弾みがつく。

翌平成29年9月イタリア パルマ市で開催された生ハムフェスティバルの海外生ハム紹介コーナーにプロトタイプ2号の庄内プロシュートを出品。フェスティバル期間中絶え間なく試食に訪れるパルマ市民にその味わいの評価を求めると、概ね好評で販売に向けて大きな手ごたえを得る。「ボーノ」「ボーノ」の連発であった。

イタリア語ポスター

生ハムフェスティバルのブースの様子
生ハムフェスティバルのブースの様子
生ハムフェスティバルの様子

会期中に各国の生ハム生産者へのインタビュー並びにプレゼンの機会を得た。その際、インタビューアーが最後に語った「御社独自の方法で日本(山形鶴岡)の風土、文化に合った製法を追求、完成させてください。」との言葉が印象的だった。 同年11月にはアルケッチァーノ店の奥田シェフがイタリア ミラノで和のメニューを紹介するパーティーの食材として庄内プロシュートを採用、イタリア現地の食通をうならせた。

プロシュートへの想い
イタリアでも高評価だった

鶴岡から俯瞰:日本独自の生ハムづくり

このように構想20年、開発から5年の歳月をかけて、ゆっくり、じっくりと貴重な時間を費やした末に、『庄内プロシュート』はようやく発売に至る。 食肉文化が浅く、湿潤温暖な日本において、国産の長期熟成生ハム生産者はまだ少ない。世界地図を見ると、イタリアと日本は細長く、東西を海で囲まれた地形がとてもよく似ている。また、鶴岡とパルマはほぼ同じ緯度に位置し、鶴岡市が北緯39度、パルマ市が北緯44度である。パルマの生ハムの生産地ランギラーノ市の生ハム生産者は「ほど近い地中海からの海風が生ハム生産に深い味わいを与えてくれる」と語る。鶴岡市も海岸からほぼ同じ距離で海岸に面している。自然環境がとても近い鶴岡とパルマ。鶴岡が日本酒の生産地、パルマのあるエミリア・ロマーニャ州はワインの生産地でもある。豊かな食材とその加工品、歴史と伝統の文化都市であることもとても似通っている。

美味しい生ハムづくりに鶴岡の土地が適していることがうかがえる。
山形県庄内で作る「庄内プロシュート」。まだ本格的な生産には至っていないが、パルマとのご縁で製法、ブランドの確立を目指す。今後も地道に改良改善を繰り返し、より良い品質の「庄内プロシュート」づくりに取組み、東北ハム独自の創意工夫で日本(山形鶴岡)の風土、文化に合った製法を追求、完成させるべく精進する所存である。

プロシュート試作品
写真は研究で解体した庄内プロシュートの断面

※プロトタイプ3号(山形県庄内産豚もも肉・日本海海水塩使用)・4号(新潟県産豚もも肉・日本海海水塩使用)は現在仕込み中で、年内に完成予定です。イタリアパルマ産プロシュートは皮付き豚もも肉を使用しており、そのプロシュートに近い味(品質)を再現できると期待します。

東北ハム 社長 帯谷伸一

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