無添加とは?
磯部理念に基づく誠実な食品作り
無添加「出羽のしんけん工房」シリーズは磯部理念に基づいて製造された、日本において数少ない無添加のハム・ソーセージです。
無塩せきハム・無塩せきソーセージは数多く存在します。しかしながら「無塩せきハム・ソーセージ」とは発色剤(亜硝酸Na、硝酸K)を使用しないハム・ソーセージを指し、他の食品添加物や増量材に関しては特に制限がないという矛盾を抱えています。したがって、各社は消費者のニーズ(身割れや結着力の不足を補う)と称してリン酸塩を使用したり(場合によってはその代替として貝カリシウム等を使用)、カラギーナン等の増粘多糖類(場合によっては海草粉末と記載)を使用するケースがほとんどです。また、乳たん白や卵たん白等の増量材で価格を低く抑えるなどのごまかしともいえる手法で生産しているのが現実です。
当シリーズは磯部晶策氏が著書「食品を見分ける」(岩波新書)で述べられた食品添加物の定義に則り、無添加と定義づけています。
食品添加物とはなにか?
仮に食品に添加するものをすべて食品添加物と定義した場合、食塩や砂糖も添加物の仲間に入ります。確かに調味料に違いはありませんが、古代から食品を調理する際に使用してきた、人体に無害なこれらの材料は食品添加物に定義づけ、その使用を控えることには無理があります。
磯部氏は食品添加物を3つの群に分類しています。
【第一群】
歴史上定かでないほどの古代から使用され、人体の生理上にも必要とみなされる添加物
食塩、砂糖 等
【第二群】
有史以来古くから使用経験があり、その必要性と同時にその使用法に精通している添加物
重曹、にがり、ワインの亜硫酸 等
【第三群】
1945年以降、製造上の必要性上から開発された比較的新しい食品添加物
着色料、保存料、発色剤、増粘多糖類等々・・・
消費者が最も警戒し、注意を怠ってはならないのは第三群に属する食品添加物です。
ただし、第三群の食品添加物がすべて有害で、人体に悪影響を及ぼすと断定しているわけではありません。これらは比較的使用してきた歴史が浅く、時間軸でとらえても安全性が確認されていないため、科学的な根拠に乏しいと判断しなるべく使用は控えたほうが望ましいということです。
出羽のしんけん工房シリーズを無添加と称する定義付けはこの第三群の食品添加物を使用しないことにあります。また、食品添加物に属しない乳たん白や卵たん白などの増量材も、その食品の質および量をごまかすために使用しているという理由において使用するべきでないと考えます。
食品添加物とハム・ソーセージの関係
日本の食品全般において食品添加物は加工技術の進歩として研究開発され、近年は多種多様な食品添加物が認可され、食品製造になくてはならない魔法の薬として広く加工食品に使用されています。そして製造された商品は一般に家庭用として販売され、同時に業務用として飲食店の食材に広く使われています。
比較的食肉消費の歴史が浅い日本において、ハムは以前高級嗜好品として珍重され、なかなか庶民の食卓に上ることはなかったようです。日本独特の魚文化の応用として魚肉ソーセージの開発により、安価な魚肉ソーセージが広く普及した経緯はやむを得ない事情であったと理解できます。
ただし、魚肉ソーセージに対抗して畜肉のハム・ソーセージも安価な製品づくりを余儀なくされました。高価な豚肉だけでは価格競争に対応できないことから家兎肉やマトンを原料に加え、さらに効果的な食品添加物を開発して低価格競争を繰り広げたのです。
その結果、ハム・ソーセージの価格は劇的に下がり、一般の家庭に普及を果たしました。反面、品質面においてはかまぼこのようなプリプリした食感のロースハムやボンレスハムなど、諸外国には類を見ない日本独特のハムが一般的に広く普及することとなりました。日本で作られるハム・ソーセージの多くが食品添加物を多用する傾向にあるのは、こうした歴史的背景に基づくものです。
食品添加物を使用する主な目的は?
ハム・ソーセージに使用される第三群の食品添加物は主に発色剤(亜硝酸Na)、リン酸塩(Na)、合成保存料、酸化防止剤、合成着色料、増粘多糖類、pH調整剤などがあります。
- 製造しやすい 原料肉の品質に多少のバラつきがあっても、容易に一定の品質の製品を製造することができ
- 納期の短縮 製造工程(日数)を短縮できる
- 低価格 乳たん白や卵たん白といった異種たん白を水と一緒に多く肉に抱かせることが可能となり、価格を安くできる
- 見た目が良い 合成着色料により色を鮮やかにし、視覚効果を出せる。
- 売りやすい 保存料の使用により賞味期間を長くできる。
などが主な理由です。
食品添加物を使用しない「無添加」製法への挑戦
平成14年(2002年)当社は山形さらど事業協同組合に賛助会員として加入し無添加の食品づくりに着手しました。当時食品業界は雪印食品や日本ハムの偽装牛肉問題などで食の信頼性を失う局面にありました。同年春、私は社長職を受け継ぐにあたり、食の安全・安心をいかにしてお客様に提供するべきかを真剣に悩みました。悩んだ末の結論は今でも業界では極めて少ない『無添加』でのハム・ソーセージづくりでした。
新商品の開発にあたっては、過去20年余りに渡り磯部晶策氏の勉強会にオブザーバーとして参加し続けて知識を深めておりました、当社会長の帯谷行夫が中心となり、磯部晶策先生のご指導のもとアイテム考案にあたりました。商品のコンセプトやネーミング、量目並びに売価の決定は私が担当いたしました。製品開発についてはハム・ソーセージ作り一筋に30年間の経験をつんだ、熟練職人の工場長が自ら試作に当たりました。当初より懸案となっていた原料の選択に当たっては、幸運にも従来より永く取引のあるカット工場が養豚事業を拡大し、SPF豚肉の生産を始めたとの情報を得ました。早速試作したところ、ほぼ満足のいく製品の仕上がりに一同喜びを隠せませんでした。
着手より半年足らずの同年8月末に大沼山形本店にて開催された「ごまかしのない食品展」に出羽のしんけん工房の原型となる商品群を出品し、確かな手ごたえを感じました。以降さらどの例会に欠かさず参加し研修を重ねて、翌年3月には正式にさらどに入会し無添加製法でのハム・ソーセージづくりに本格的に参入する運びとなりました。
以降新製品をラインナップに加えながら順調に生産量を増やし、今に至ります。